今回の記事は、
商業簿記の『預金』について
解説します。
この記事を読んで理解できること
- 取立とは?取付とは?
- 当座預金の実際残高と帳簿残高が一致しない原因は?
- 銀行勘定調整表とは?
- 預金の財務諸表上の表示は?
商業簿記2級『預金』:取立と取付について


まずは預金に関する処理の
取立と取付について解説します。
上記の図の内容を箇条書きにすると、
- α商店がβ商店の商品を小切手で購入
- β商店がγ銀行へ小切手を提示
- γ銀行がδ銀行へ請求
- δ銀行がγ銀行へ送金
となり
②が取付、③が取立となります。
取付 → 預金者が銀行におこなう請求
取立 → 銀行間での請求
商業簿記2級『預金』:当座預金の実際残高と帳簿残高が不一致となる原因について
未取付小切手 | 小切手の取付がおこなわれていない状態 | 修正仕訳:不要 |
---|---|---|
時間外預入 | 時間外に預け入れた金額が銀行側にまだ入金処理されていない状態 | 修正仕訳:不要 |
連絡未通知 | 既にあった当座預金への入出金の連絡が、当社にまだ来ていない状態 | 修正仕訳:必要 |
仕訳誤記入 | 当座預金に関する仕訳が誤っている状態 | 修正仕訳:必要 |
未渡小切手 | 作成した小切手を渡したつもりが、実際はまだ渡せていない状態 | 修正仕訳:必要 |
未取立小切手 | 小切手の取付をおこなったが、まだ入金されていない状態 | 修正仕訳:不要 |
当座預金の実際残高と帳簿残高が
合わない理由は様々ですが、
分類すると上記の6種類に分かれます。
未取立小切手・時間外預入・未取付小切手は
時間が経つと解消されるので、
修正仕訳は必要ありません。
逆に
連絡未通知・仕訳誤記入・未渡小切手は
時間がたっても解消されないので、
修正仕訳が必要になります。
連絡未通知
連絡未通知は実際にあった入出金が、
まだ連絡されていない状態です。
なので、未通達だった内容の
修正仕訳が必要になります。
(例)当座預金の実際残高が帳簿残高と比べて10円大きいことがわかり、原因は先日回収された売掛金10円の入金だった。
このことが銀行側からまだ連絡されていなかった。
修正仕訳
借方 | 貸方 |
当座預金 10円 | 売掛金 10円 |
仕訳誤記入
仕訳誤記入は、仕訳を間違えてしまった
ということです。
ですから、正しい仕訳への修正が
必要になります。
未渡小切手
未渡小切手は、渡すつもりだった小切手を
何らかの理由で渡せていなかった状態です。
なので、先走ってしまった仕訳内容を
修正する必要があります。
(例)4月1日、電気代を支払う際に小切手100円を振り出した。
しかし4月3日現在、この小切手を渡し忘れていた。
4月1日の仕訳は
借方 | 貸方 |
水道光熱費 100円 | 当座預金 100円 |
これを本来の仕訳に修正すると、
貸方の当座預金を消して
代わりに未払金としたいので
修正仕訳
借方 | 貸方 |
当座預金 100円 | 未払金 10円 |
- 当座預金の実際残高と帳簿残高がずれる原因は6種類
- 連絡未通知、仕訳誤記入、未渡小切手は修正仕訳必要
- 未取付小切手、時間外預入、未取立小切手は修正仕訳不要
商業簿記2級『預金』:銀行勘定調整表について
銀行勘定調整表の作成は、
簿記2級における『預金』の最終目標になります。
なぜ必要かというと、
経理では預金残高の実際残高と帳簿残高を照合します。
その際に両者が一致していない場合は、
原因を調べる必要性があります。
(ここで必要があれば修正仕訳をします)
この照合作業をする際に
銀行勘定調整表が大きな役割を果たします。
銀行勘定調整表には下記の3種類があります。
- 両者区分調整法
- 企業残高基準法
- 銀行残高基準法
では、それぞれについて解説します。
銀行勘定調整表(両者区分調整法)
当社の帳簿上の残高 | 2000 | 銀行残高証明書上の残高 | 2300 |
入金連絡未通知 | 200 | 時間外預入 | 500 |
仕訳誤記入 | △100 | 未取立小切手 | △700 |
2,100 | 2,100 |
両者区分調整法ですが表の
左側に要修正仕訳の項目を
右側に修正仕訳不要の項目を
記載します。
修正後、両者の帳簿残高が一致します。
表を作成する時
加算する仕訳を上に、減算する仕訳を下に
記載するのが通常です。
銀行勘定調整表(企業残高基準法)
当社の帳簿上の残高 | 2,000 |
未取立小切手 | 700 |
入金連絡未通知 | 200 |
時間外預入 | △500 |
仕訳誤記入 | △100 |
銀行残高証明書上の残高 | 2,300 |
企業残高基準法は
当社の帳簿上の残高→銀行残高証明書上の残高
と縦1列で表されます。
先程の両者区分調整法と見比べてみると、
右側にあった銀行残高証明書上の残高が
左側に移っています。
その際に右側の修正仕訳も左側に
移っていますが、注意したいのが
正負が逆転しているということです。
銀行勘定調整表(銀行残高基準法)
銀行残高証明書上の残高 | 2,300 |
時間外預入 | 500 |
仕訳誤記入 | 100 |
未取立小切手 | △700 |
入金連絡未通知 | △200 |
当社の帳簿上の残高 | 2,000 |
銀行残高基準法は、
銀行残高証明書上の残高→当社の帳簿上の残高
と縦1列で表されます。
見てわかる通り、
企業残高基準法が上下で反転した表ですね。
今度は両者区分調整法の
左側にあった当社の帳簿上の残高が
右側に移っています。
その際も企業残高基準法と同じく、
移った方の仕訳の正負が逆転しています。
- 両者区分調整法:左側に当社の帳簿上の残高、右側に残高証明書上の残高
- 企業残高基準法:両者区分調整法→右側を左側へ(仕訳の正負を逆転して)移行
- 銀行残高基準法:両者区分調整法→左側を右側へ(仕訳の正負を逆転して)移行
商業簿記2級『預金』:財務諸表上での表示について
最後に財務諸表上で表示される『預金』
について解説します。
財務諸表:貸借対照表
基本的には流動資産へ表示されます。
名称は『現金預金』or『現金及び預金』となります。
ただし、定期預金(正常営業循環基準外)かつ
満期日が1年を超える(1年基準外)は
固定資産の「投資その他の資産」へ表示されます。
この場合の名称は『長期性預金』となります。
財務諸表:損益計算書
普通預金や定期預金で発生した利息は
損益計算書上の営業外収益に表示されます。
- 貸借対照表:ほとんどの場合は流動資産
- 満期日が1年を超える定期預金は固定資産
- 損益計算書:預金で発生した利息は営業外収益
商業簿記2級『預金』:まとめ
いかがでしたか?
今回は日商簿記2級の内容
商業簿記『預金』
について解説しました。
最後にポイントを
簡単にまとめておきます。
- 取立は銀行間・取付は企業と銀行間でのやりとり
- 当座預金実際残高と帳簿残高の不一致原因は6種類
- そのうち連絡未通知・仕訳誤記入・未渡小切手は要修正仕訳
- 銀行勘定調整表には3種類の方法がある
- 基本は両者区分調整表、企業(・銀行)残高基準表はその応用
- 財務諸表:貸借対照表での表示は流動資産or固定資産
- 固定資産の場合、満期日が決算日の1年後以降の定期預金→長期性預金
- 財務諸表:損益計算書では受取利息→営業外収益
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。